-人参湯(にんじんとう)-


人参湯(にんじんとう)の効能

体力虚弱や体力の低下した人で、顔色が悪く貧血ぎみ、疲れやすく冷え症で、胃腸が弱くみぞおちにつかえ感があり、胃内停水、食欲不振で甘い物や温かい物を好む、下痢、胃痛、嘔吐などがあり、口中に薄い唾液が溜る人に用います。胃下垂、胃腸カタル、胃アトニー、つわり、虚弱児、貧血、病後の衰弱などに応用します。冷え症、胃下垂、胃腸カタル、胃アトニー、などに用います。胃腸が丈夫な人でも、冷たい飲食物の取り過ぎや急な冷えのために起きた、腹痛や下痢、嘔吐などに有効です。


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人参湯(にんじんとう)の解説

人参湯による冷え症の効果

女性は男性よりも温度変化に敏感で、生理機能上も冷えやすく、冷えると内臓の機能が低下して様々なトラブルを起こしやすくなります。とりわけ「冷え症」は免疫力を低下させることから、最近ではがんの原因になることが指摘されています。

「冷え症」は食生活が乱れた人や睡眠不足、睡眠障害の人、あるいは無理なダイエツトを繰り返している人に多く見られます。特に体温が低いと代謝が低下するため、何を食べてもすぐ太ってしまう、太るから食事の量を減らす、それによってさらに代謝が落ちるという悪循環に陥りやすいのです。

「冷え症」の対策としては代謝を活発にするようによく体を動かし、ミネラルが豊富なバランスのいい食生活をし、早寝と十分な睡眠を確保するという、生活改善から始めなくてはなりません。

大切なことは、手足が冷えて安眠できないというような人は、冷え症を体内から改善すべきであるということです。体の外からいくら体温以上の温熱を加えてみたところで、冷え症は治りません。

日本では昔からコタツが普及していて、現在も電気コタツや電気アンカがよく用いられますが、これらは絶えず外部から体温以上の温熱を人体に加える装置です。これによって、体内で体温を発生させて体外に放散するという自然で生理的な熱の伝わり方が逆になってしまいます。

その結果として、血液の循環が正しくなくなり、心臓から送り出される血液はコタツの温熱が加わらない上半身、特に頭部にばかり送られて下半身の血行が悪くなりがちになります。そして頭はのぼせ、ほてり、足腰は冷えて不健康な状態になるのです。

冷え症は免疫力を下げ、がんにかかりやすくする

もちろん多少の個人差はありますが、人間の体温のベストは36.6度といわれています。この体温なら身体細胞の新陳代謝が最も活発となり、健康で活発、免疫力も高くほとんど病気をしない状態を保っことができます。そしてこの体温が1度低くい35.5度になりますと、新陳代謝は50~60パーセントに落ち込み、冷え症になります。

そして自律神経失調やアレルギー体質を招きやすくなるといわれます。さらに35度に近づくにつれ、遺伝子が誤作動しやすくなって、がんにかかりやすくなるといわれます。

34度は海難救助で救出後に生命活動ができるかどうかを判断する体温で、自分で自分の体を自由に動かすことができない体温です。33度では幻覚を起こします。

全身が冷える方、手足の指先が冷える方、腰や下半身が冷える方、腹部や子宮が冷える方など、人によって異なった箇所が冷えますが、それぞれに合った処方で冷えが改善しますと、めまいや立ちくらみ、胃腸虚弱、肩こり、生理痛など脳まされていた各種の症状も同時に改善していく傾向がよく見られます。

胃腸の機能を高めて冷え症を改善する「人参湯」

人参湯は胃腸が虚弱で手足や腹が冷え、小便が多量でうすく回数が多い、倦怠感や食欲不振などがある場合の下痢、胃痛、嘔吐に用いられます。また胃腸が丈夫な人でも、冷たい飲食物の取り過ぎや急な冷えのために起きた腹痛や下痢、嘔吐などに用いられます。

人参湯は甘草乾姜湯(かんぞうかんきょうとう)に人参(にんじん)白朮(びゃくじゅつ)を加えた処方で、胃腸を温め、消化を促進する漢方薬です。配合は甘草、白朮、人参が各3g、乾姜が2gです。

配合される生薬は性質によって、「寒、涼、平、温、熱」の5つの性に分類されますが、人参湯の生薬は「温」ばかりです。そして人参湯の処方で中心になる生薬は、乾姜(かんきょう)です。人参湯は乾姜で胃腸を温めることが重要な目標になっています。

乾姜の品質の善し悪しは味で簡単に見分けることができます。天日で完全に干した乾姜は味が激辛ですから、この処方は辛味を強く感じるものほど効果が強く現れます。

もう一つ、重要な生薬が甘草(かんぞう)です。中国産の甘草は東北甘草、西北甘草、新彊(しんきょう)甘草に大別できますが、漢方処方には東北甘草を用います。

甘草は用途によって、生甘草と炙甘草(しゃかんぞう)を使い分けますが、一般に甘草を生で用いればのぼせ、ほてり、いらいら、口渇を改善し体内の毒素を排出する作用が強く、蜂蜜で妙めて炙甘草にすると、補気作用つまり元気をつけて内臓機能を活発に高める作用が強くなります。人参湯は、灸甘草を用いるべきなのですが、日本ではほとんど生甘草が用いられています。

年を取ると胃腸も老化して、胃酸の分泌が悪くなり、消化不良を起こしやすくなります。人参湯のもう一つの働きは、胃酸の分泌を盛んにさせることで、食が細くなった老人の食欲を増すことに、効果的な漢方薬です。すなわち、アンチエイジングの処方ともいえるのです。このため、人参湯と八味地黄丸(はちみじおうがん)の併用も効果的です。

適応される主な症状

配合生薬

配合生薬の効能

人参(にんじん)

漢方治療において最も繁用される有名生薬の一つで、古くから高貴な万能薬としてよく知られています。漢方では強壮や胃腸衰弱、消化不良、嘔吐、下痢、食欲不振などの改善を目標に幅広く処方されます。

この生薬の特異成分であるダマラン系サポニン(主としてギンセノシドRb、Rg群)は動物実験で、強制運動に対する疲労防止、および疲労回復、抗ストレス作用、ストレス潰瘍防止、免疫活性およびアンチエイジングなどを示し、各種機能の低下を抑制する作用が認められています。

その他、抗炎症、抗悪性腫瘍、肝機能改善作用、血糖降下作用、血中コレステロールおよび中性脂肪の低下作用なども確認されています。また、記憶障害改善(抗痴呆)効果が示唆されています。

甘草(かんぞう)

甘草は漢方治療で緩和、解毒を目的として、いろいろな症状に応用されますが、主として去痰、鎮咳、鎮痛、鎮痙、消炎などです。

有効成分のグリチルリチンには、痰を薄めて排除する作用があり、体内で分解するとグリチルレチン酸となって咳を止めます。

その他、グリチルリチンには多種多様の薬理効果が有り、消炎、抗潰瘍、抗アレルギー作用の他、免疫活性や、肝細胞膜の安定化、肝保護作用、肝障害抑制作用などが明らかにされています。

有効成分イソリクイリチンおよびイソリクイリチゲニンは糖尿病合併症の眼病治療薬として、また胃酸分泌抑制作用もあり胃潰瘍の治療薬として期待されています。

甘草はあまり長期服用しますと、低カリウム血症、血圧上昇、浮腫、体重増加などの副作用が現れることがあるので、注意を要します。

蒼朮(そうじゅつ)

朮は体内の水分代謝を正常に保つ作用があり、健胃利尿剤として利用されています。特に胃弱体質の人の下痢によく効き、胃アトニーや慢性胃腸病で、腹が張るとか、冷えによる腹痛を起こした場合などにもいいです。

日本では調製法の違いによって白朮(びやくじゅつ)と蒼朮(そうじゅつ)に分けられます。いずれも同じような効能を示しますが、蒼朮は胃に力のある人の胃腸薬として使い分けられています。

両者の主成分は、精油成分のアトラクチロンと、アトラクチロジンです。ちなみに、白朮には止汗作用があるのに対して、蒼朮は発汗作用を示します。朮は漢方治療では、多くの処方に広く利用される生薬の一つです。

乾姜(かんきょう)

乾姜は優れた殺菌作用と健胃効果、血液循環の改善効果、発汗と解熱効果があります。漢方では芳香性健胃、矯味矯臭、食欲増進剤の他、解熱鎮痛薬、風邪薬、鎮吐薬として利用されています。

辛味成分のショウガオールやジンゲロールなどに解熱鎮痛作用、中枢神経系を介する胃運動抑制作用、腸蠕動運動充進作用などが有ります。そう他、炎症や痛みの原因物資プロスタグランジンの生合成阻害作用などが認められています。


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漢方薬の使用上の注意

漢方薬の副作用


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